夏から秋にかけて旬を迎える果物「プルーン」。ジャムやドライフルーツなどの加工品として知られていますが、実は生でもおいしく食べられます。いえ、むしろ生で食べるべき!なのです。産地ではスーパーや直売所などで手に入りやすいものの、繊細なフルーツのため、生ものは限られた場所でしか購入できません。そんな貴重な果実を栽培する『高見澤プルーン園』を取材しました。
Contents
高見澤プルーン園の基本情報
・店名 | 高見澤(たかみさわ)プルーン園 |
・取扱商品 | プルーン スモモ |
・営業時間 | 9:30~17:00 |
・販売方法 | 通信販売(インターネット) 委託販売(町の駅・道の駅) 直売 |
・定休日 | ‐ |
・住所 | 〒384-0503 南佐久郡佐久穂町大字海瀬北原4281 |
・電話番号 | 0267-88-6076 |
・駐車場 | あり |
・支払方法 | 現金 |
・URL | https://www.prune-farm.com/ https://www.facebook.com/prunefarm/ |
高見澤プルーン園は1,800本のプルーンの木を保有!有機肥料を使った環境にやさしい栽培方法を採用
高見澤(たかみさわ)プルーン園があるのは、長野県南佐久郡(みなみさくぐん)佐久穂町(さくほまち)。
管理人の住む小諸市、軽井沢町、佐久市、佐久穂町、レタスで有名な川上村などを含む長野県の東南部一帯は「佐久(さく)地域」と呼ばれています。
晴天率の高い佐久地域は、プルーンの栽培に最適。
また、佐久地域はプルーン発祥の地でもあるのです。
佐久地域を含む長野県全体のプルーンの収穫量は全国シェア60~70%を占め、2位以下を大きく引き離して、文句なしのNo.1。
高見澤プルーン園のある佐久穂町では、町の特産品としてプルーンの生産に力を入れています。
高見澤プルーン園はプルーンの木1,800本を保有しており、栽培や管理は基本的に手作業で実施。
時間と手間をかけて、おいしいプルーンを消費者のもとへ届けています。
高見澤プルーン園では、化学肥料は一切使わず、有機肥料による栽培方法を採用。
また、BT剤(微生物を利用した安全性の高い生物農薬)などを活用した病害虫防除を行っていて、環境にやさしい農業を営んでいます。
高見澤プルーン園は「エコファーマー(持続性の高い農業生産方式を導入している農家)」にも認定されており、環境にやさしい農業を行っている農家として県のお墨付きも得ている、優秀な農園!
「プルーン」は繊細で希少な秋の味覚!全国シェアNo.1は長野県
プルーン(西洋スモモ)はバラ科スモモ属の果樹。
ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が含まれおり、美容と健康に良いフルーツで知られています。
ドライフルーツ、ジャム、シロップなどの加工品がポピュラーですが、実は生でも食べることが可能。
生のプルーンは、果皮がパープル、中の果肉は琥珀(こはく)のような、黄金のようなカラーが特徴です。
果実の真ん中にはかたい種が入っていますが、スッと実から離れるので食べにくさはありません。
果汁たっぷり&甘酸っぱく、食感の良いジューシーなフルーツで、皮ごと食べらます。
なお、生のプルーンは繊細で、あまり日持ちがしません。
そのため、産地以外の地域で生のプルーンにお目にかかることはめったにないでしょう。
プルーンの収穫量全国シェアNo.1の長野県では、時期になると、ありがたいことにスーパーや道の駅などで入手が可能です。
プルーンの旬は夏~秋。
品種により、7月下旬~10月上旬頃に市場に出回ります。
プルーンの木は、成長すると高さが4m以上になる大木。
開花時期は4月~5月頃で、梅のような白い花を咲かせます。
プルーンは自家受粉(じかじゅふん)するので、基本的に人工授粉は不要ですが、高見澤プルーン園ではミツバチの働きを利用して受粉をサポートし、実つきを良くしています。
プルーンは種類が豊富!品種によって、見た目も味わいも異なる
プルーンとひと口にいっても、その種類は実にバラエティ豊か。
高見澤プルーン園では、主に以下の品種を取り扱っています。
- アーリーリバー
- オパール
- サンタス
- ツアー
- くらしま早生
- サマーキュート
- ローブドサージェン
- くらしま
- サンプルーン
- オータムキュート
- プレジデント など
プルーンは、品種により、大きさ、形、色、食感、味わい、果汁感などが異なるのが特徴。
食べ比べをして、お気に入りの品種を見つけるのもおすすめです!
プルーンは寒さに強いが、凍霜害は注意が必要
プルーンは耐寒性があり、比較的寒さに強い果樹ですが、凍霜害(とうそうがい)には注意が必要です。
凍霜害とは、主に早春に急激な気温の低下によって起こる「凍結」と「霜(しも)」の被害。
花から実になる時期、つまり春に霜が降りると、めしべの生育に影響があり、実つきが悪くなります。
気温が-3~-4℃まで下がると、厳しい状況に。
それだけではなく、早春に氷点下になると、水や養分が通る維管束(いかんそく)が凍結し、幹が破裂することも。
そうすると、木に養分が行きわたらなくなるため、やがて枯れてしまうのです。
2019年は、5月のゴールデンウイーク明けに気温が-5℃まで下がり、高見澤プルーン園も凍霜害に。
その年のプルーンの収穫量は大幅に減少し、大打撃を受けました。
凍霜害を防ぐためには、薬剤を散布したり、火をたいて周囲を暖めたりなどの方法を用いて対策します。
しかし、あまりに気温が低いと、それでも温度低下を防ぎきれないことも。
寒冷地では、春に雪や霜を見る光景は珍しくありません。
そのため、冬が終わり、暖かくなってきても、農家は気が抜けないのです。
プルーンは雨に弱い!梅雨・長雨は大敵!
プルーンは長雨や湿気も苦手。
気温が高めのときに雨が続き、湿度が高くなる環境では、「炭疽病(たんそびょう)」が発生しやすくなります。
炭疽病とは、炭疽病菌と呼ばれるカビが原因で発生する病気。
葉や実などに黒い斑点が生じて、葉が枯れたり、果実が腐敗したりなどの被害が起こります。
そのため、梅雨の時期や長雨には注意が必要。
病気を防ぐために薬剤を散布するのですが、雨が続くと薬剤が流されてしまい、効果が薄れてしまうのです。
また、プルーンの実はかなりデリケート。
成熟して、果汁をたっぷり含んだ実に雨があたると、割れてしまうことも。
そのため、高見澤プルーン園では、木に雨除けのビニールをかけます。
ビニールをかけるのも、もちろん農園スタッフの手作業。
かなり大変ですが、良質な果実を育てるために欠かせない作業の1つです。
ちなみに、シーズン終了後には、ビニールを撤収します。撤収も手作業で行い、すべて片づけるのに1週間ほどかかるのだとか。
プルーンを栽培するのに、雨は少ない方がベター。
高見澤プルーン園の1年を紹介!シーズンオフも仕事が盛だくさん!
プルーン農家の仕事は、シーズンが終了したら、それで終わりではありません。
その年の収穫と出荷が終わると、すぐに次年度の準備がはじまります。
▼高見澤プルーン園の年間スケジュール
10月中旬 | 出荷終了後、雨除けビニールの撤収と草刈作業 |
11月~12月 | わら集め(約2,000束)・わら敷き【※1】 |
12月~ | 元肥(肥料)撒き、剪定(せんてい)の開始【※2】 |
2月上旬~ | 苗木づくり開始【※3】 |
6月~ | 摘果作業【※4】 |
7月~10月 | 収穫・出荷【※5】 |
【※1】土の上にわらを敷くメリット
プルーンを栽培している土の上にわらを敷くと、次のようなメリットがあります。
- 根を保護する
- 干ばつ(水不足)を防ぐ
- 雑草の抑制
- 有機質の補給
- 土がかたく締まらない(根の成長を妨げない)
なお、わら集めとわら敷きの作業には1カ月ほど要するとのこと。
【※2】剪定作業には3~4カ月を要する
高見澤プルーン園では、12月に入ると剪定(せんてい)作業を始めます。
剪定とは枝の手入れのことで、枯れたり、病気になったりした不要な枝や、込み合っている部分を取り除き、風通しを良くして、健康な枝の成長を促進するのが目的です。
剪定も、もちろん手作業。
すべての作業を終えるのに、3~4カ月かかります。
【※3】植え替え用の新しい苗木をつくる
高見澤プルーン園では、シーズンオフに、植え替え用の苗木づくりを実施。
プルーンの木の経済寿命は15~16年で、寿命を過ぎると、良い実がつかなくなるといわれています。
そのため、毎年新しい苗木をつくり、順番に古い木と植え替えます。
苗木をつくるのはハウスの中。
外は2月で真冬の寒さですが、ハウス内の温度は15℃に保たれています。
この暖かい環境のまま、6月頃まで育てることで、短期間で1年生の苗が完成する仕組み。
苗木は、台木にミロバランスモモ(ス台)という品種を使い、プルーンの枝を接着する「接ぎ木(つぎき)」と呼ばれる方法でつくられます。
【※4】手作業で90%の実を摘果!
摘果(てきか/てっか)とは、未熟な実を間引くことで、残った実をおいしく育てるためには欠かせない作業です。
また、摘果することで、木そのものにも栄養が行きわたり、生育が良くなるメリットも。
高見澤プルーン園では、じつに90%の未熟な果実を手作業で摘果。
つまり、市場に出荷されるプルーンは、結実した実全体のわずか10%なのです。
高見澤プルーン園では、毎年6月頃から摘果作業を開始。
雨天時を除く、毎日8:30~17:00、スタッフ5~8人体制で作業します。
▼熟練スタッフに聞いた摘果のコツ
- 果実同士がぶつからないようにスペースをあける
- 地面の方向に下がるように生っている実を残す
- サビ(木にふれたりして茶色くなっている部分)のある実は落とす
せっかく生った実を落としてしまうのは何とももったいない気がしますが、木のためにも、残った実を良質なものにするためにも欠かせない大切な作業。
ここで思い切って摘果しなければ、おいしい果実が育たないのです。
【※5】収穫・出荷もすべて手作業
7月に入ると、いよいよ愛情込めて育てたプルーンの収穫と出荷が始まります。
収穫と出荷も、もちろん手作業。
農園スタッフが収穫とパック詰めの仕事を分担し、最後の出荷を終えるまでの約100日間、ノンストップで作業にあたります。
農園の作業スタッフは17~18人ほど。
毎日交代で収穫・出荷を担います。
ここでも活躍するのはベテランの農園スタッフ。
収穫したプルーンの大きさと色をそろえて、慣れた手つきでパックに詰めていきます。
なお、ふぞろいなもの、サビ(茶色く変色した部分)ありのものなどは規格外となるため、市場に出荷されませんが、農園内で限定販売されます。
また、収穫が早すぎてかたいもの、反対に完熟しすぎたもの、生食に不向きなものなどと判断されたものは加工品の材料になるとのこと。
高見澤プルーン園では、プルーンの鮮度を保てる予冷庫(よれいこ)も完備。
収穫したときのままの鮮度を1週間ほどキープできる秀逸な設備で、予備のストックや、出荷前の商品の一時保管などに活用されています。
鮮度の良い、おいしいプルーンを消費者に届ける工夫がたくさんあるのですね!
プルーンより手間ひまがかかる!日本スモモ(プラム)の栽培もていねいに!
高見澤プルーン園では、プルーンだけでなく、同属の果実である「スモモ/日本スモモ(プラム)」の栽培も行っています。
取扱い品種は下記の通り。
- 貴陽(きよう)
- いくみ
- サンタローザ
- サマーエンジェル
- ハニーハート など
スモモは、プルーンと違って実がつきづらいことに加え、実がつきすぎた場合は、翌年の花の質が良くないなど、管理が難しい果樹。
これは、めしべを欠く「不完全花(ふかんぜんか)」を生じることが多いためです。
また、スモモはプルーンと同じ仲間であるものの、他家受粉(たかじゅふん)のため、人工授粉の作業が不可欠。
さらに、人工授粉においても、同じ木の花粉で授粉させても結実しない性質(自家不結実性)がある上、他品種の花粉を授粉させたからといって必ずしも結実するわけではなく(交配不親和)、交配親和性ある品種同士を組み合わせなければならないのです。
高見澤プルーン園では、受粉樹(授粉用の花粉を採取する)に「ハリウッド」と呼ばれるスモモの品種を採用しています。
スモモは基本的に実つきが良くないため、プルーンのように摘果はしません。
ただし、高級品種で知られる大玉の「貴陽(きよう)」は、雨による破裂防止の傘がけ(雨除け)をするのと同時に摘果を行います。
スモモの花粉採取から人工授粉までの手順を紹介!
スモモは、人工授粉をするだけでもかなりの労力。
ここで、その手順を簡単にご紹介します。
1. 受粉樹から花のつぼみを採取
2. 花のつぼみから葯(やく)を採取
脱穀機とふるいを使って、おしべの先にある葯(花粉の入った袋)を取り出します。
3. 花糸(かし)取り
おしべの構成要素の1つで、葯を支える糸状の部分である花糸(かし)を取り除きます。
4. 下処理&開葯器へ
きれいに葯だけを残し、開葯器に広げて数日保管します。
葯を指でさわって、黄色い粉が付着すれば、花粉の採取成功です。
5. 授粉用花粉づくり
花粉増量剤を加え、花粉を増幅させます。
花粉を増量させることにより、人工授粉時に花粉が均一に分散するので、授粉効率が上がる、結実しやすくなる、などのメリットがあります。
6. 人工授粉作業
受粉樹であるハリウッドから採取した花粉を、専用機械を使ってスモモの花に噴射して人工授粉させます。
人工授粉は、気温15~20℃くらいで、風がない日がベスト。
また人工授粉させる品種が80%程度開花したタイミングで授粉させると実がつきやすいそうです。
なお、雨の日は基本的に人工授粉を行いません。
スモモは一部の品種を除き、摘果作業がないとはいえ、人工授粉させるだけでも、かなりの手間がかかります。
プルーンと同様に、スモモの栽培・管理も1つ1つ手作業。
ていねいにつくられているからこそ、高品質でおいしいものができあがるのです。
スモモの収穫時期はプルーンより早く、例年7月中旬頃から出荷が始まります。
「おいしいプルーンを食べて、喜んでもらいたい」~園主:高見澤良平さん~
「お客さんに『おいしい』と言って食べてもらうのが1番の喜び」と話すのは、高見澤プルーン園の園主、高見澤良平(たかみさわりょうへい)さん。
気さくで温厚な人柄で、農園の取材時に管理人の質問にもていねいに答えてくださいました。
高見澤さんは、日本におけるプルーンの普及に多大な貢献をされたスゴイ方。
2018年9月の佐久プルーンコンクールでは、最高位の「長野県知事賞」を受賞し、農園で栽培するプルーンのクオリティの高さを証明しました。
確かな品質を誇るプルーンは、高見澤さんが研究・開発した独自の栽培法によって生産されています。
高見澤さんは、プルーンの本格的な栽培をするにあたり、「根域制限栽培法(わい化栽培)」を導入。
根域制限栽培法とは、不織布ポットを使って、根の伸びをおさえながら育てる栽培方法です。
根の伸びをおさえることにより、一般的な栽培方法に比べて早く果実が実る上、高糖度のプルーンの生産が可能に。
加えて、木が高く成長しすぎないので、安全に収穫作業ができる、収穫効率を上げられる、などのメリットもあります。
つまり、根域制限栽培法は、おいしい果実を生むだけでなく、生産や管理もしやすい画期的な技術なのです。
佐久穂町も、例外なく高齢化が進む地域の1つ。
高見澤プルーン園・園主の高見澤さんは、高齢者でも作業しやすいプルーンの栽培方法について、現在も研究を続けています。
アクセスマップ
・店名 | 高見澤(たかみさわ)プルーン園 |
・取扱商品 | プルーン スモモ |
・営業時間 | 9:30~17:00 |
・販売方法 | 通信販売(インターネット) 委託販売(町の駅・道の駅) 直売 |
・定休日 | ‐ |
・住所 | 〒384-0503 南佐久郡佐久穂町大字海瀬北原4281 |
・電話番号 | 0267-88-6076 |
・駐車場 | あり |
・支払方法 | 現金 |
・URL | https://www.prune-farm.com/ https://www.facebook.com/prunefarm/ |